子どものあそびは無限大<br />創造力をぐんぐん伸ばす、家と空間のつくり方とは?
2018.10.25

子どものあそびは無限大
創造力をぐんぐん伸ばす、家と空間のつくり方とは?

画像:遠藤さん1

「リビングで勉強すると、頭のいい子が育つ」。雑誌やネットでそんな記事が話題になってから、あえて子供部屋に学習机を置かない家庭も増えてきました。成績のいい子に育てることももちろん大切ですが、できれば子どもの創造力を育み、チャレンジ精神を身につけられるような空間を作りたい。でも、それって具体的にはどうすればいいのでしょう?「家族の暮らしラボ」は、そのヒントを探るべく、建築家の遠藤幹子さんにお話を聞いてきました。

遠藤さんは、NHK Eテレ「いないいないばぁっ!」や福岡市科学館など、子どもが楽しめる空間づくりを得意とする建築家。自身の想像力と戯れるように建築をつくっていく遠藤さんのお話には、私たち親がついつい忘れかけてしまう、あそびの本質が詰まっていました。

大人が考えたデザインは、たいてい無視される!?

今回のテーマは、「子どもの創造性を育む空間づくり」。子どもを楽しく遊ばせる場所といえば、遊具やおもちゃの溢れる空間を想像しますが、遠藤さんはそんな予想を裏切るような、意外なエピソードをお話してくれました。

「子どもって大人が思う通りには遊ばないんですよね。ほら、滑り台だって、逆さから駆け上がったりするでしょう?大人が考えた合理的なデザインって、だいたいは無視されて、子どもたちはもっと自由に遊びを見つけてくるんです。」

画像:遠藤さん2

部屋にモノが散らかっているのが嫌いな遠藤さん。子どもに「散らかしたままにしてはダメ」とよく叱っていたら、扉の奥になんでも隠す子どもに育ったそう。「扉を開けるとなだれが起きます(笑)親の思う通りには育たないものですよね」と語る。

確かに、「こう遊んでほしい」という大人の思惑を超えて、自由に遊び回るのが子どもというもの。

「日本の公園に行くと、使い方の決まっている遊具がいくつかあって、あとは立て看板に『あれはダメ』『これはダメ』と、禁止事項がたくさん。これだと、子どもたちが遊び方を創意工夫する機会が、少ないんですよね。大人は、遊び方を与えるのではなくて、遊びのきっかけになるものだけ与えられればいい、そう考えるようになりました。」

ルールと自由、リスクとハザードのバランス

では、個人宅に置き換えた場合、どう考えればいいのでしょうか。遠藤さんは、こう言います。

「空間というよりも、オペレーションが大事だと思います。わたしが東京に帰ってきて最初に住んだのは、古い木造二階建ての家だったのですが、取り壊しが決まっていたので、子どもには壁いっぱいに落書きをさせていたんですよ。次のマンションも、一つ空いた部屋を子どもの自由空間にして、好きに使っていい部屋にしました。すると、部屋の中に家ができていたり、押入れが基地になっていたり、子どもたちが想像力をどんどん使うようになっていきました。」

公園と同じように家の中も、親が決めたルールでいっぱいになってしまいがちなのではないでしょうか。子供の自由にさせるというのは勇気がいることだと思いますし、オペレーションに工夫が必要かもしれませんが、子どものためにできることは、できる限りしてあげたいものです。

「親はついつい心配して、先回りしてダメなことを言ってしまいますよね。でも、朝は何時に起きるとか、夜は何時に寝るくらいの最低限のルールを決めて、あとは放任するぐらいでいいと、私は思いますよ。今の子どもは、習い事で時間割がきっちり決まっていたり、家にいても親が子どもの行動を把握したがるので、自由な時間は意外と少ないんです。でも、子どもがのびのびできる場所や時間は、とても大切です。そうすれば、自分で好きなことを見つけて、夢中になっていきますから。」

「親が子どもの行動を把握したがる」というのは、ドキッとするセリフです。子どもが目を離した隙に何をするか心配で四六時中気にしてしまうこともありますが、確かに、それは子どもからすれば、監視されていると感じるのかもしれません。とはいえ、子どもの自由を尊重しすぎると、危ないことも起こってしまうのではないでしょうか?

「その時は、リスクとハザードという考え方が参考になると思います。子どもが危険なものを学び、察知できるようになるためには、"ヒヤリ・ハット"と呼ばれるリスクは、必要なことなのです。火が熱いとか、ここから落ちたら怪我をするとか、そういう経験が危険を避けられる知恵になりますからね。
一方で、ハザードというのは、不測の事態が起こった時に、子どもに重大な後遺症が残ってしまう危険性のことです。これは、親が慎重に取り除かないといけません。子どものいる空間をよく大人が観察して、花瓶が落ちてきそうとか、紐が首に巻きつくかもしれないとか、起こりうることを想定して、ハザードにあたるものは全て取り除く。その中で、自由に遊ばせられるといいですね。」

最近人気の高いリビング階段を例にとると、階段があること自体はリスクです。落ちると危ないのは確かですが、低い段差で落ちて痛い思いをしたり、落ちそうな感覚を体験することで、感覚を養います。一方、2階部分の手すりの隙間は、ハザードです。子どもが隙間から落ちないように、手すりの幅を設定するなり、対策を取る必要があります。
画像:九州八重洲株式会社「子育て応援プロジェクト」

子どものテリトリーを守ってあげること

冒頭で触れた「リビングで勉強する」スタイルについても、遠藤さんの考えを聞いてみました。

「空間を自由に使って、勉強したい場所で勉強するのは、いいことですよね。しかし、リビングでいつも必ず勉強するようにと指定してしまうと、それは勉強部屋で勉強させるのと同じことかもしれません。どこで勉強させるかより、子どもの自由が確保されていることが大切です。子どもは一人ひとり違うから、その子の成長に合わせて必要な形に変えていけばいいと思います。」

成長に合わせて変えていくとは、具体的にはどうすればいいのでしょうか?

「例えば、いつも親御さんがそばにいる場合は、子どももプライバシーが欲しくなるでしょうから、小さくても子どもだけのスペースをつくってあげるといいでしょう。反対に、夕飯から寝るまでしか親御さんに会えない場合は、なるべく一緒に居られるようにダイニングに子どもの居場所をつくってあげるといいでしょう。このように、変わっていく親子や家族の関係に合わせて、今のうちの子にはこれがいいと、カスタマイズできるといいですよね。」

子どもの成長とともに変化させることができる、2ドア1ルーム。初めから入り口を二つにしておくと、後から壁を作ったり、簡易的に家具で仕切ったりと、空間のレイアウトを自由に変えられます。子どもと一緒に考えて、ここちよい家にアップデートしていきましょう。
画像:九州八重洲株式会社「子育て応援プロジェクト」

遠藤さんのお話を聞いていると、ある共通点が浮かび上がってきます。それは、子どもの行動を必要以上に制限せず、子どもの自由を確保してあげることの大切さです。

「子どもはテリトリー形成といって、自分の家の中で『ここはわたしの居場所』という場所を確立するようになっていきます。例えば、ランドセルなどをいつも置く場所は、自分のテリトリー。そこは自分で管理するし、自分で責任を持つようになります。自分の大切な何かが守られる場所を構築するのは、人として成長し、自立する上でとても重要なステップなんだと思います。だから親も、干渉しすぎずに子どものプライベートを残してあげることが大事なんですね」

子どもが創造力を育むことができる空間を考えることは、親の教育に対する考え方を見直す機会にもなりそうですね。何もないところに空間を立ち上げ、そこでの体験を設計するという建築家ならではの視点を、遠藤さんからたくさん学ぶことができました。

画像:遠藤さん3

紹介

画像:遠藤さん4
建築家
一般社団法人マザー・アーキテクチュア代表理事、建築家。東京藝術大学大学院建築専攻を修了した後、オランダに渡りベルラーヘ・インスティテュートで学ぶ。留学中に出産をし、オランダで子育てをしながら勉強と仕事をする日々を過ごし、2003年に帰国してからは、東京都現代美術館「こどものにわ」や箱根彫刻の森美術館「箱根Art Loop」、日本科学未来館「 “おや?”っこひろば」、NHK Eテレ「いないいないばあっ!」など、子どもが自由に遊べる空間づくりのプロとして、さまざまなプロジェクトに参画。福岡では、福岡市科学館全体のデザインと設計を手がけている。

子育て応援プロジェクト / 九州八重洲㈱

西部ガスグループの九州八重洲株式会社では、「子育て応援プロジェクト」として「良い子」の育つ家づくりを考える活動を行っています。親も子どもも暮らしやすい工夫が満載。お気軽にご相談ください。
※記事内の画像は「子育て応援プロジェクト」での取り組みのものです。

九州八重洲㈱ HP
http://www.kyushu-yaesu.co.jp/production/project/

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