予期せぬ出合いはよき出合い! 素敵な1日をつくるアートさんぽへ
2020.05.19

予期せぬ出合いはよき出合い! 素敵な1日をつくるアートさんぽへ

「アート」と聞くとなんだか難しくて、専門の知識を持っていないと楽しめなさそう...と敬遠しがちではないでしょうか。いわゆる美術館やギャラリーに行かずとも、気軽にアートに触れられる場所って意外とあるんです。カフェで手軽に、本屋さんで気軽に、おうちワインを買うついでに...など! 本物の作品を目の前にすると、わくわくしたり、驚いたり、ドキドキしたり...心の動くままにアートに触れることで、いつもの視点がちょっぴり変わります。細かいことは考えず、"アートなまちなか散歩"に出かけてみませんか?

自分にしかできないことをやる。

まず一軒目にご紹介するのが、2020年4月で8周年を迎える「TAG STA(タグスタ)」。福岡のローカルコーヒーショップの草分け的な店であり、早朝7時からオープンしているエスプレッソスタンド&ギャラリーです。取材時は店の奥にある真っ白なギャラリーで、フォトグラファー・半沢克夫さんの写真展が開催されていました。

入り口はひとつ、性格はふたつ。オーナーの橋口靖弘さんは、「しがらみや偏りのない"まっしろ"な状態でアート(アーティスト)を選びたい」という想いをもち、店の新装開店と同時にギャラリーをオープン。ギャラリーはコンクリート打ちっ放しの質感が気持ちいいカフェスペースとひと続き。とはいえ小さな段差(この段差が重要!)を越えて足を踏み入れると、まったく別世界。創造性が刺激されるクリエイティブなハコが広がっていました。ちなみにこのギャラリーは、福岡で活躍する画家、藪直樹さんと一緒に完成させた空間だそうです。

「TAG STA」のギャラリーは場所貸しをせず、ほとんどが自主企画の個展。また、基本的に個展中もアーテイストは在廊しません。その理由を尋ねると、「アーティストは貴重な存在」というメッセージと、自らアーティストとお客さんの橋渡し役になるという想いをお聞きできました。「作家性や作家の想いはなるべく伝えるようにしますが、お客さん自身が、この作品を見てどう感じられるかが大事。僕はすべてのお客さんに同じことを伝えなくてもいいと思っています。たとえば、そう簡単には会えない存在であるアーティストの在廊とお客さんの来店のタイミングがちょうど重なったとしたら。やっぱり忘れられない体験になるでしょうし、作品や作家についてももっと知りたいという気持ちにつながりますよね」。

オーナーの橋口康弘さん。アートへの造詣が深く、柔和な語り口に癒される。南区の『townz』、警固の『trene』は姉妹店。

今こそ気軽な "立ち飲み"店が人気だが、オープン当初はいわゆる「スタンド」型のコーヒーショップは珍しかった。

橋口さんがギャラリーを続けてきてもっとも嬉しいことは、「この店で初めて"絵"を買ったお客さんが大勢いる」ことだといいます。エスプレッソを飲みにふらっと立ち寄ったお店で、予期せぬ体験が待っている...。それは一人のお客さんの人生を変えることになるかもしれない、この上ない幸福な出合いだといえるかもしれません。

TAG STA

〒810-0003 福岡県福岡市中央区春吉1-7-11 スペースキューブ1F
営業時間:7:00〜20:00 不定休
TEL:092-724-7721
HP:https://tagsta.in

コーヒーと、音楽と、福岡カルチャーと。

福岡在住のアーティスト"M.O.T.E."によるエキシビジョン「#PEANUTS風」の様子。 コーヒーを片手にぐるりと見て回ることができる。

次に紹介するのは「STEREO COFFEE」。JBLスピーカーの良質な音が鳴り響く空間の中、コーヒーを片手に、軽快に2階へと駆け上る可愛らしいカップルに続いてお邪魔しました。こちらは天神から一歩離れた、渡辺通りの路地にある人気のコーヒースタンド。取材当日は、福岡県在住のアーティスト"M.O.T.E."によるエキシビジョン「#PEANUTS風」が開催中。築35年の2階建ての民家を総リノベーションしてつくった店の2階は、同店がおすすめする旬なアーティストやポップカルチャーを発信するギャラリースペース「AND」として展開しています。

「音楽とコーヒー、そして『AND』で開催するイベントをとおして、お客さんの普段の何気ない日常の一部になっていってくれたら嬉しいですね」とオーナー。ギャラリーは自主企画が多く、
イベントを決めるときは「一緒にやって面白そう」「一緒にやって楽しめる」人たちが基準。地元・福岡はもちろん、全国のイラストレーターや作家と一緒に企画を行っています。

常時2〜3種類の豆をハンドドリップするコーヒーと
日替わりでエスプレッソビバレッジを提供。

イラストレーターやキャンドルアーティストなど、
福岡にゆかりのある作家・アーティストのイベントも多い。

写真、イラスト、アパレル、アクセサリー...など、"新進アーティストを応援するギャラリー"としての側面も強く、展示内容によってお客さんの層もガラリと変わるそう。展示内容が来店のキッカケになることも多く、常に新しいお客さんが入り混じる刺激的な空間になっている『STEREO』。「イベントに合わせてSTEREOらしくDJ イベントも不定期で開催中。スタッフもDJ としてイベントに参加しています! 」。福岡のシーンを牽引する稀有なコーヒースタンドです。

STEREO COFFEE

〒810-0004 福岡県福岡市中央区渡辺通3-8-3
営業時間:11:00〜19:00 不定休
TEL:092-231-8854
HP:http://stereo.jpn.com/coffee/
※現在はテイクアウトのみで営業中

何度も通いたい、まちの本屋の小さなギャラリー

熊本市のメインストリート、上通アーケード内にある長崎書店。
大きなクスノキが美しい「オークス通り」に面している。

お次は舞台を移して、熊本へ。熊本市のメインストリートを歩き、上通商店街にある「長崎書店」を訪れました。長崎書店は、今年創業131年目を迎える老舗の本屋さん。社長である長﨑健一さんは、2006年の店舗リニューアルの際、店内に約5坪弱ほどの小さなギャラリーをつくりました。これはリニューアルにあたって全国の本屋を見てまわるなかで、京都にあるギャラリー併設の本屋「恵文社」の佇まいに衝撃を受けたからだと話します。「たとえば絵本の原画や写真集の写真など、ギャラリーに置いてあるものはすべて“ほんもの”。それらを本屋で目の当たりにできることに驚きを隠せませんでした」。

美術館でもなく、画廊でもなく、地元にある“まちの本屋”のギャラリー。店に寄ったついでにふっとのぞいてもらえたら、思ってもなかった出合いが待っているかもしれない。それは一冊の本にも同じことがいえますが、長﨑さんは、「本以外でも、そんな新鮮な体験を地元のお客さんに提案していきたい」と思ったそうです。

展示内容やお声かけする基準は、長﨑さん自身が面白いと思うもの。そして馴染みのお客さんに喜んでもらえそうなもの、というものさしを大事にしています。「一般の生活者の目線として、これはいいなと思う“素人感覚”を大切にしています。買えるのであれば買おうかな、とおもう値段やサイズだとしたら、買う。ギャラリーでは、何かしら心に残るヒト・モノ・コトに出合えること。お客さんにその体験をしていただくことが大事なんだとおもいます」。たとえば、現在熊本を中心に大人気の若手画家・松永健志さんの作品も、このギャラリーでの展覧会をきっかけに、たくさんの方に知られることとなりました。

「本屋のギャラリーのよさは、敷居の低さ。その中でもしっかり “ほんもの”をお見せしていきたいと思っています。」と語る長﨑さん。本を仕入れて売る、だけじゃない、“まちの本屋”。そのギャラリーからつながる輪がある。今日も明日も、長﨑さんはそんなことを考え続けている気がします。

取材時は、絵本『ドン・ウッサ そらをとぶ』の原画展を開催中。
ギャラリーのスケジュールはおよそ1年先まで埋まっている。

無名・著名問わず、気になる作家や作品があれば即オファーするという長﨑さん。「キッカケが合えば直接会いにいく」スタンスを大事にしている。

長崎書店

〒860-0845 熊本県熊本市中央区上通町6-23
営業時間:10:30〜19:30 定休なし(元旦のみ休み)
TEL:096-353-0555
HP:https://www.nagasakishoten.jp

1枚のアートには空間を変える力がある。

中心街を離れ約30分車を走らせると、郊外の住宅街にあるギャラリー&ワインショップ「MARGHU(マーグ)」にたどり着きます。扉を開け、笑顔で出迎えてくれたのは内田聖治さん・令奈さん夫妻。こちらは、“特別な日に飲みたいちょっといいワイン”を提案するショップであり、国内外の現代作家の作品を中心に、版画、リトグラフ、油絵などを取り扱う画廊です。令奈さんの実家は久留米市の老舗画廊で、幼い頃から多くの絵に囲まれて育ったそう。久留米市の画廊も、同じ名前ですが、熊本の「MARGHU」の特徴は、絵柄も価格も、比較的30代〜50代の世代の方が住む家にフィットする作品がセレクトされています。

「“画廊“や“アート”と聞くだけで、何だか一気に難しく感じちゃいますよね! うちのお客様は、『ワインを買おうと思っていたのに、絵を買っちゃった!』なんて人もいるほど(笑)。意外とお手軽な作品も取り扱っているんですよ」と笑います。とはいえ、一つひとつの作品や作家への知識・造詣は深く、その時代背景までしっかり丁寧に教えてくれるので、思わず聞き入ってしまいます。

郊外の静かな住宅街の一角にある『MARGHU(マーグ)』。今夜のワインを選んでいる途中で出合うアートに期待! 地方では稀有な存在だ。

「日常を特別な気分にしてくれるワイン」をテーマに、ソムリエであるオーナーがセレクトするこだわりの1本が2000円〜。

「1枚の絵(アート)には空間を変える力がある」と令奈さん。壁に飾らなくても、ただソファに置いたり、廊下にたてかけたり、和室に置いたりするだけで、カッコいい。いつもの生活空間を一気に洗練させてくれるんだそうです。「アートは出合い。『あ、出合った!』と思ったら、ぜひ買っていただきたいんです。あとから、『手に入れておけばよかった…』と思っても遅い。地方にいると、買う場所もなければ出合う場所もなかなかないので、ほんもののアートをぜひご自宅に持ち帰って大切にしてもらいたいです」。

こちらでは、買ったらすぐ飾りたいというお客さんの想いを考慮し、額入りで提供してくれるのもうれしいポイント。いつものお店のインテリアで部屋の模様替え…もいいけれど、ワインと一緒に持ち帰ったアートで空間チェンジ…なんて選択も大人ですよね。

ギャラリー&ワイン MARGHU(マーグ)

〒861-1112 熊本県合志市幾久富1909-1747
営業時間:11:00〜19:00 日曜日定休
TEL:096-201-4680
HP:https://marghu.jp

まとめ

「アートって何だ?」。もしかしたら、そんなこと、わからなくてもいいのかもしれません。それでもふらっと立ち寄ったコーヒースタンドの奥で、商店街の本屋さんの隅で、予期せぬ出合いの導きがあるかもしれません。そのとき、皆さんがこれまで感じたことのない気持ちに出合ったら…その日はちょっといい日になりそうですね。

※店舗の情報は4月27日現在のものです。状況によって営業時間や店休日などが変わる可能性もありますので、最新の情報をホームページやSNSで確認してください。

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