芸術作品のような中華料理ができるまで<br />八仙閣の料理人に学ぶ、"挑戦"のカタチ
2019.04.23

芸術作品のような中華料理ができるまで
八仙閣の料理人に学ぶ、"挑戦"のカタチ

八仙閣といえば、福岡を代表する中華料理店のひとつです。2004年から西部ガスグループの一員となりましたが、その歴史は1967年の創業から50年以上にわたります。世代を超えて通う人も多いこちらのお店。そこには、華やかなメニューの数だけ、スタッフの挑戦がありました。今回は、本店で働き約20年という前菜担当のプロにインタビュー。お話を聞くと、何事にも通じるような、チャレンジして乗り越えていく姿が見えてきました。

佐賀県出身の片渕良子さん。周りをパッと明るくするような雰囲気が印象的です。

人のためになる仕事に就く、と決めて選んだ料理人の道

「人にとってなくてはならないことをして働きたいという気持ちが昔から強くて。それだったら"食"だなと思い、中学のころに料理の道に進もうと決めました」と、笑顔いっぱいに話してくれたのは、本店で宴会調理部の係長を務める片渕良子さん。

その決意のもと、食のスペシャリストを育てる"食品調理科"のある高校へ進学します。卒業と同時に調理師免許を取得し、八仙閣に入社しました。それから約20年、真摯に中華料理と向き合っています。中でも、八仙閣の名物のひとつであるコース料理『名菜席』との出合いは、今まで以上に中華にのめりこむきっかけになったそうです。

『名菜席』ができたのは、2006年のことでした。日本最大の中華料理店『銀座アスター』の元総料理長で、中華料理の巨匠としても知られていた久保木武行さんが八仙閣の料理顧問となったことで八仙閣の『名菜席』が誕生したのです。「以前は、大皿や小皿に料理を盛ってテーブルに出していたのですが、『名菜席』ではまったく違ったんです。彩りや食材の使い方など、とにかくインパクトのある見た目で今までの考えでは通用しないなと感じたのを覚えています」。そこから、新たな片渕さんの挑戦が始まります。

片渕さんは、初めて目にした『名菜席』に衝撃を覚えたと言います。まるでアートを見るような驚きがあったそう。

師の知恵と技術を、真似て学んで身につける

それまで八仙閣のメニューに無かった『名菜席』は、片渕さんにとって新しい中華料理にチャレンジする機会となりました。『名菜席』の料理ひとつひとつは、味はしっかりと中華でありながら、見た目はフレンチを連想させるような鮮やかな彩りです。盛り付けは、お皿の奥に向かうにしたがって高さを出したり、彩りをバランスよく配置したりと、まるで華道のようにセンスと繊細さを求められます。もちろん見た目だけではなく、酸味や甘み、辛みなど味付けも精緻なバランスの上に成りたっています。うまくできたものは写真におさめておき、何度も見なおすこともあるのだとか。

『名菜席』を作る技術は、すぐに身につくものではなかった、と片渕さんは振り返ります。

味と彩り、そして配置までバランスを考え抜いて作られる美しい一皿。
こちらは片渕さんが写真におさめていたものです。

久保木先生は生前、口調は優しいけれど厳しい方だったとか。お客さまに喜んでもらえる"作品"として完成するまで、もちろん妥協は許されません。

「技術はとにかく真似をしました。久保木先生の手先を見て真似したり、フレンチのレシピ本を見て盛り付けを参考にしたり。先生の考えも技術も徹底的に真似をして没頭していたら、いつの間にか納得のいく『名菜席』が作れるようになっていました」と片渕さん。ここに至るまで、いくつもの失敗と悔しい思いに直面したことも話してくれました。

季節の味わいを楽しめるようにと年に4回メニューを改定しています。

チャレンジを続ける中、心が折れなかったのはなぜ?

思うように盛り付けができなかったり、お客さまに料理を提供するタイミングが遅れたり、失敗や悔しい思いをしたことは山ほどあると語ってくれました。「やっぱり思うようにできなかったときはたまらなく悔しくて、家で反省して考え込むこともありますね」。そんなとき心の支えとなるのが、先輩をはじめ周りのスタッフとの関係だと言います。

「以前、蒸し器に手を入れてしまい、やけどしたことがありましたが、誰にも言わなかったんです。その後、それに気づいた先輩から『何で早く言わんとよ!』と逆に怒られました。他にも、落ち込んでいたら周りのスタッフが『しゃべらんかったら元気出らんよ!』と話しかけてくれたり。周りのスタッフのおかげで、へこんでも気持ちを切り替えられています」。

「あとは...」と、照れくさそうに片渕さんが教えてくれたのは、「悔しいことがあったら家で好きなアーティストの歌を聴きます。歌のなかで『孤独も恥も嘘さえも痛みも怒りも僕らには全部必要だから』という歌詞があり、それを聴くと私も大丈夫!と思えてきます(笑)」。へこたれそうになったとき自分自身の"切り替えスイッチ"を用意している。そうした工夫もまた、片渕さんの挑戦を支える土台となっているようです。

「味と見映えの良さを兼ねそなえた料理。これを生み出し続ける挑戦は、自分への挑戦みたいなものかもしれません」

この環境で感じる大きな"やりがい"

「名菜席で、最後のメニューを出し終えた後に、料理人が前に並んであいさつをする機会がありました。そのとき、来場したお客さまから大きな拍手をいただき、おいしかったと言ってもらえたときは感極まりました」。そのときを回想する片渕さんの表情は、一際にこやかです。

「ほかにも、最近うれしかったのは、休みの日に友人を連れて八仙閣でランチをしたときのことです。目の前で友人が、『おいしい〜、ランチメニューぜんぶ食べたいくらい!』と言ってくれて、それはもうめちゃくちゃうれしかったです」。

ふだんは、調理場からお客さまの表情をのぞくことはできません。それでもやっぱり、食べる人の喜ぶ顔を見ることが片渕さんの情熱の源です。"人にとってなくてはならないことをして働きたい"という昔からの思いは、片渕さんの原動力となり八仙閣の料理を支えているようでした。

盛り付けをするときは、いつも真剣なまなざし。

イメージと違った八仙閣の社風とは?

上下関係が厳しく、罵声が飛び交うキッチン...。入社する前、片渕さんは料理の世界にこんなイメージをもっていたのだとか。しかし、その予想は覆されます。

「調理場はいつも笑い声が聞こえて、和気あいあいとした雰囲気です。入社前のイメージとはまったく違いました。それに、ふだんから肩ひじ張らない関係性があるので、わからないことも質問しやすいし、若手でも新メニューのアイデアをどんどん出せています」。

取材中も、若手スタッフが盛り付けをしているところに、通りすがりのベテランスタッフから「それ、うまくできとおやん」と一言かけられていたり、「それ私がしましょうか?」と若手スタッフから先輩に声をかけていたり、そんなシーンを何度も目にしました。

一人ひとりが思ったことを発言し、挑戦でき、自分らしく働ける。ここには、そんな環境がありました。きっと味だけでなく、店の雰囲気も、こうした背景のもと継承されているのでしょう。

後輩から悩み相談をされることもあるという片渕さん。話しやすい空気が、風通しにいい環境を作っているようです。

中華料理 八仙閣

中華料理 八仙閣 / ㈱八仙閣

<本店>
福岡市博多区博多駅東2丁目7-27
TEL:092-411-8000
営業時間:11時~22時
【ランチ】 平日(月~金/※祝日のぞく)限定
11:30~14:00(オーダーストップ13:30)
https://www.8000.co.jp/

本格的なチャイニーズレストランとして普段のランチからフォーマルまで幅広く対応しております。
大切な方へのおもてなしや、ご家族でお祝いにもご利用ください。

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