初競りは父の魚を。福岡県初の"女性競り人"へ
2019.04.19

初競りは父の魚を。福岡県初の"女性競り人"へ

2020年、福岡県で初となる女性競り人が誕生しようとしています。昼夜逆の生活、独特の掛け声と指の合図、世界一といわれる日本の魚市場の目利き。そして、70年ぶりとなる法改正を来年度に控えての、市場の新たな展開とこれからのミッション。女性競り人の卵とベテラン競り人との対談を通して、魚市場という特殊な世界の仕事を追います。

ベテランの競り人の宮脇さんと、競り人の卵の中村さん。

漁師の家庭で育った女の子の夢

威勢のいい掛け声が響く、深夜の「長浜鮮魚市場」。20人ほどの仲買人を相手に、市場の花形ともいえる競り人が「手やり」と呼ばれる指の合図でテンポよく魚に値段をつけていき、場内の魚があっというまにさばかれていきます。その迫力ある姿に憧れ、競り人になると心に決めた一人の女の子がいました。

その女の子が、幼い頃の中村友海さんです。糸島で漁師をしているお父さんと一緒に、小学校に入る前から「長浜鮮魚市場」に出入りしてきました。お父さんの背中を見て育ったお兄さんも漁師の道へ進んだということもあり、中村さんが幼い頃からずっと抱いてきた夢を叶えるために水産高校を志望した際にも、家族みんなが応援してくれました。そんな家族の後押しもあり、中村さんは希望通りに水産高校へ進学します。授業の一環として「長浜鮮魚市場」へ見学しにきた時には、「競り人になりたいんです!」と見学担当者に申し出るほどでした。その情熱が伝わり、2017年に「福岡中央魚市場」に入社しました。

競り人になるためには3年間の現場経験と、競り人の試験への合格が必要です。中村さんは現在入社2年目。競りの準備から、競りの後の支払い手続きなど、一連の業務を担当しています。そして、2020年に福岡県初の女性競り人になるべく、真っ直ぐな眼差しで日々市場に立っています。

「長浜鮮魚市場」の魚を、より美味しく

中村さんと、中村さんの上司である課長の宮脇将洋さんにお話をうかがいました。宮脇さんは競り人歴19年のベテランで、中村さんの教育係でもあります。

宮脇さん 入社してからもうすぐ丸2年。魚を締めるのもだんだん早くなりよるね。

中村さん はい!漁師さんたちが持ってきてくれた魚を、いい状態で競りに出せるように、その下準備を頑張っています。

宮脇さん 締め方がうまくいかないと、魚の質が落ちてしまうんですよ。

中村さん 鮮度や美味しさを長く保てる神経締めも市場で覚えました。

― 神経締めとは、何ですか?

中村さん 脊髄にワイヤーを通して、神経を壊すんです。そうすると魚の動きがピタッと止まって余計な血が回らず、鮮度と美味しさが長持ちするんですよ。

宮脇さん 10数年くらい前は、神経締めは一般的ではなかったんですが、今では「長浜鮮魚市場」のほとんどの魚を神経締めしています。

― 負担が増えるので、大変だったのではないですか?

宮脇さん 過渡期は大変でしたよ。以前は「ピチピチ動くほうがイキがいい」と、かえって高く売れたりしてね(笑)。

中村さん 神経締めをすると、魚の価値もあがります。

― 福岡の魚の美味しさには、そんな秘密もあったのですね。

宮脇さん 安心安全を基本として、美味しい魚を流通させることが市場の役割ですからね。

ワイヤーを使って手際よく魚の神経締めをする中村さん。

フォークリフトの操作もお手のもの。

魚も人も、とにかくよく見る

― 一人前の競り人になるために、どんな心がけが必要ですか?

宮脇さん まずは魚をよく見ること。そして、魚を知るためにいろんな魚を食べなさいと言っています。競り人は高く売りたい漁師さんと、安く買いたい仲買人さんの間に立ちます。季節ごとの魚の売れ筋や味わいを知っておくことも、駆け引きでは必要になってくるんですよ。

中村さん スーパーに行っても「魚の目は濁ってないか」「切り身は筋っぽくないか」と、自然と目利きの視点になりますね。今の時期はブリが美味しくて、ブリばかり買ってしまいますが(笑)。

宮脇さん それから、人のやり方をよく見て自分のモノにすることですね。

中村さん はい。魚の並べ方ひとつで、競りの流れは変わってしまうんです。並べ方は入ってきた魚の種類やサイズ、季節など、状況によって変わってきます。宮脇さんが競りをすると、魚が早く流れて、とてもスムーズなんですよ。自分が並べた時は、競りの勢いが止まってしまうこともあります。日々勉強ですね。

宮脇さん 実際に競りをやってみないと、肌で感じてみないとわからない部分もあります。自分のペースもありますしね。ですが、今から並べ方の感覚を掴んでおけば、競り人になった時に競りやすくなります。

新たなミッションと、守っていくミッション

宮脇さん 中村さんが競り人になる年、来年の2020年度からは70年ぶりに市場の法改正もあるんです。

― どのように変わるんですか?

宮脇さん 今までは仲買人さんを通しての取引でしたが、これからは市場も直接販売ができるようになります。

中村さん 関東や関西などの市場同士で取引もできますし、市場から直接個人に魚を売ることもできるようになるんですよ。

宮脇さん 九州や全国に向けて市場から魚を直送する時には、西部ガスグループということで、信頼感を持ってもらえると思います。うちの強みのひとつですね。

中村さん 将来的には「長浜鮮魚市場」に来れば、お土産でも飲食店でも、魚に関するものならなんでも揃うようにしていきたいですね。市場直営の海鮮料理店なんて、いいですよね!

― それはぜひ行ってみたいです!東京に民間の流通市場があるのですが、そこでは漁師さんから売れ筋の魚ばかりをセレクトして買い取る動きがあるそうです。

宮脇さん 法改正でそういった動きが加速するかもしれませんが、「長浜鮮魚市場」ではいろんな魚を流通させて、その魚の美味しさや楽しみ方を広げてくのも使命のひとつです。

中村さん この法改正を生かして、漁師さんの収入も増やしていきたいですね。

宮脇さん そうやね。販売ルートを持つ仲買人さんと連携しながら、「長浜鮮魚市場」を盛り上げていきたいです。

一番頼りにされる競り人になりたい

― 昼夜逆転の生活は、大変じゃないですか?

中村さん 起きるのは午後の19時で、寝るのは午前11時ごろです。キツく感じたのは最初だけで、ずっとこの生活なので慣れますよ。日に焼けないですしね(笑)

宮脇さん 夏は夜のほうが涼しくて、働きやすいですよ。

― 確かにそうですね(笑)。どんなところにやりがいを感じていますか?

中村さん 自分の並べた魚がスムーズにさばけた時ですね。逆の場合は悔しい思いをすることもありますが、やりがいや達成感は日々感じています。

宮脇さん 競り人は実力主義みたいなところがあるので、競りの結果がすべてですからね。

中村さん そういった意味で男女に関係なく仕事ができると感じています。「女の子っちゃけん」といわれても無視します(笑)

宮脇さん 市場にいる人は、口は荒いですが、根はやさしい人が多いんですよ。中村さんの初競りは、お父さんとお兄さんの魚にしようという話もあります。

― いい話ですね。ジーンときます。

中村さん 父や兄はもちろん、地元・糸島の漁師さんが市場に来てくれて、「任せたよ!」「また来るね!」と言ってくれた時はうれしいですね。道の駅などの直売所に漁師さんが直接魚を持ち込むこともできる中、市場に足を運んでもらえるということなので。漁師さんと仲買人さんとコミュニケーションをとりながら、一番信頼される競り人になりたいです!

― 来年の、福岡県初の女性競り人の誕生を楽しみにしています!本日はありがとうございました!

福岡中央魚市場株式会社

福岡県福岡市中央区長浜3-11-3-401
TEL:092-711-6128
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